藤沢市では、旧東海道藤沢宿街なみ継承地区にある、旧桔梗屋の利活用に向けて「サウンディング型市場調査」を行っている。旧桔梗屋とは、江戸時代から藤沢宿にて茶や紙の問屋を営んでいた旧家であり、店蔵、母屋、文庫蔵の3棟が国登録有形文化財である。
特に店蔵は、外観、内部共に建築当初(明治44年)の姿をよく残しており、関東大震災前の「蔵の町」としての様相を伝える貴重な存在であり、また南関東に残る唯一の店蔵である。
市は、令和2年に建物部分の寄付を受け、敷地全体を取得し、この貴重な「旧桔梗屋」を適正に保全しつつ有効に活用する為、様々な取り組みを行っている。
今回の調査は、民間事業者による活用の可能性を把握し、柔軟な発想や視点に基づく事業アイデア等、幅広く意見を収集することを目的にしているようである。
支部としても、事前にサウンディング型市場調査への参加意向等のアンケートの依頼を受け9社が意見を述べている。市としては、耐震改修工事をはじめ全体の保全計画も含めた事業提案を期待しているようだ。市への譲渡が決まる以前に当社は、元所有者の依頼を受け、文化財建造物を維持することを条件とした、売却先を探す事業に携わっていた経験があるが、民間事業者が文化財建造物を保全する、経費を負担して、収益を見込む事は、難しいのではないかと考えている。このサウンディング型市場調査の結果は、12月末頃を目処に公表されることとなっているが、どのような利活用計画が提示されるか期待されるところである。
立地的にも街道沿い目に止まる場所にあり、藤沢宿のシンボルとして、旧桔梗屋の敷地が、藤沢宿交流館にふさわしく、現交流館の位置付けも再考しながら、市が運営する藤沢宿関連の施設(藤沢浮世絵館等)を含めて、再編することなども選択肢の一つになるのではないかと思われる。
支部としても、より良い利活用が実現するよう協力してゆきたいと考えている。
記 有限会社アトリエフジオカ一級建築士事務所 藤岡 裕