はじめに
前回ブログで、第2回景観整備機構指定勉強会の内容をご紹介しましたが、そのなかで「景観・まちなみとは(事前資料WEB記事)」についてがありました。
本記事では、こちらの内容について学習するためのコンテンツになります。事前にお読みいただき、当日勉強会の方を視聴していただくと理解の深さが変わるかと思いますので、是非ご一読ください。
また、タイトルで「vol1」と書きましたが、記事を書き出してみて「到底1つの記事でおさまる話でないはないぞ、これ。。」となりましたので、数回に分けて記事を書くことにしました。というか当日までに完結するようなことできるのだろうか・・・。
とりあえず身近にある景観をみてみる
景観という言い方をすると、堅そうな印象を受けて身構えてしまうかもしれません。
でも、これは身の回りにあるものであり、意識無意識にかかわらず普段感じているものですね。
で、より意識する場面というのがあると思います。その時に意識的に強く感じたり、はっと気付いたりする時ですが、だいたい心が揺さぶられている時かと思います。
例えば
デートで由比ヶ浜に行こうと誘う時(たいてい夕方?(笑))
ドライブの目的地で景色がいいところを選ぶ時
インスタ投稿するのに映える場所やアングルを探す時
お店の印象を良くしたくて外観やしつらえを考える時
大山や富士山の頂上からご来光をみたい時
など、ほかにもいろいろとあるかと思います。自分で意識してたことなど思い返してみるとより鮮明になるのではないでしょうか。また、そこにはそれぞれの嗜好や心理が働きますので、同じ景色を見ても感じ方にはばらつきが出ます。
この写真は自分にとっては「良い景色」のもののひとつです。
要素としては「夕焼け」「富士山」「陰影」「山の稜線もしくはスカイライン」「光」などで構成されています。
たぶん「そんなに良いのかしら?」と感じる人もいるかと思います。自分でも絵的な点からすれば、もっと良い条件で景色を写真に収めることができるだろうな、と思います。
景観的な言い方で条件を書き出すと次のような感じになります。
- 視点場(視る時に立つ場所)
- アングル(画角)
- 時間と環境(太陽光の状態(分光分布など)、大気の状態(透過率、雲量雲高など)、そのほか)
- 視対象(この場合一番大きい要素は富士山)
では、なぜ自分にとっては良いのかというと、この写真は生まれ育った場所の景色の一つであり、ここには「心象風景」つまり自分の思い出の記憶が要素として含まれているからです。人によって感じ方にばらつきが出るのは、先に述べたその人の嗜好と心理がでるので上記の場合、ボクの記憶による印象が表出しているというわけです。
景観要素と視覚情報について
景色をみたときに良い印象を得るという体感は、みなさん経験があるかと思います。
また、居心地が良いとか雰囲気良いと感じている時に、良く見渡してみるとその景色も少なからず感じていることに気づくのではないでしょうか。
そして、部屋やお店などにおいて、居心地よくもしくは雰囲気よくしたいと考える時は、できるだけ良く感じられるようにいろいろな工夫をされると思います。それがまさに、景観デザインのひとつともいえるわけです。
ですので、そういう点からすれば、広い範囲を対象とするまちなみのデザインや、商店街など通りのデザインと、インテリアデザインや室内のスタイリング、店舗ファサードデザインなど、景観デザインの手法の基礎を押さえることでどちらも技術的に計画していくことができるといえます。
上記の写真の例では、自然の緑もある程度意図的にコントロールしながら、いろいろな景観要素に意識をして外観をデザインしています。この連載(すでに連載化!?)では、写真の中の主な景観要素を#hogehoge という感じで表現してみますので参考にしてみてください。
そしてそこには、気持ちが穏やかになる(幸福感など)、人の気を引く(誘引)、お店に入りやすくする(入店率アップ)、そこにずっといたくなる(景観が居心地の良い雰囲気を出している)、などいろいろな思惑(目的という類ですね)があったり、などそこに居るもしくは訪れる人の心に響くような視覚情報をデザインするという人の行為があります。つまり、自然のままの景色以外は、すべて人が景観をつくっています。
視覚情報と書きましたが、実際は聴覚や嗅覚など視覚以外の要素も影響するのですが、ここでは景観の基本としてまずは視覚中心に整理したいと思います。
視覚による情報は五感すべての感覚のうち8割を占める情報量といわれています。
「見た目8割」といわれるのはあながちまんざらでもない訳です(笑)
次の写真を見てください。
トマトは赤いですか?ピーマンは緑ですか?・・・「何言ってんだ、当たり前じゃん」
そう、多くの方は当たり前と言われると思います。でもうまれたときからこの写真の真ん中の物体は「トマト」であり「赤い」と認識するでしょうか?しませんね。
もししてたとしたら、前世(が人間であれば!)の記憶を継承しているとかでないとありえないわけです。そう、視覚情報は記憶された情報より識別されているわけです。
では、脳の中ではどのようにみた映像が処理されているかというと、まず元の画像を光の波長(周波数)として目から情報を得ます。この時には元画像以外の情報もありますので、よけいな情報をカットします。(この時に逆に一部不足する情報も出てきます。)
つぎに、この波長を電気信号に変換して神経を通り、脳の中で視覚野とよばれるところにて波長を映像に変換します。このときに実は記憶にある「記憶のイメージ」との判定判別をしています。
(この時に不足している情報も補われます。)
このような過程を経て画像が「再現」されてわたしたちはみたものを認識しています。
つまり、視界に入ってくる映像はある意味都合良く処理されているので、視界に入ってくる映像は再現した映像とは異なるものとなります。
このとき記憶されている形や色がありますが、色のほうを「記憶色」といいます。記憶色は実物よりもすこし鮮やかに(彩度が高い)記憶されています。
このように、視覚情報は記憶とのすり合わせをしていますので、すりあわせる情報には、過去の体験や感じたことも含まれたりします。これによって良い印象に寄ったり、ちょっと悪い印象になったりブレが生じたりもするといえるでしょう。
なお、同様に脳内で記憶とのすり合わせ処理がされているものが聴覚になります。これら2つの感覚は人の進化の過程では新しい感覚だそうでして、古くからある感覚として、嗅覚、味覚、触覚があり、これらは直感的(口に入れた瞬間、やばいと感じると本能的に吐き出すなど)な感覚なのだそうです。このあたりは、だんだん本筋から離れた話題になるのでまた機会があれば触れたいと思います。
さいごに
今回はvol1ということで、とりあえず景観とはの入り口的な内容で書いてみました。次回は、もう少し「景観とは」「まちなみとは」をおもに自分で撮影した事例写真などを手掛かりに掘り下げてみたいと思います。
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初稿2021年3月17日