はじめに
3月26日に、第2回景観整備機構指定勉強会を開催します。
この勉強会の準備をせっせと進めているのですが、コンテンツが整うにつれて今までとは違う企画(良い意味で!)になってきています。
そして、とても大切なことを考える機会になりそうです。ですので、多くの方に参加いただき、感じたことを共有したいなと。そこで、この企画のこれまでとの違いや、どんなことに触れるのかをお伝えしたいと思います。
特に40代アンダーの皆さんに伝えたいことです。
これまでやってて気づいたこと
この企画をしているのは、景観・まちづくり特別委員会になります。発足して10年ともなり、立ち上げ期をすぎて次のステージに入ったところです。
これまでは、
- 良い景観はどこにあるの?
- 各エリアでのまちづくり活動はどんなのがあるの?
- 道路の景観ってどうよ?
など、景観・まちづくりの「デザイン」に対して主に向き合ってきていました。
でも、それらを所有している人や管理運営している人など関係する方々の話をうかがうと、そこには実際に所有・管理・運営している方の、維持することのむずかしさに対してや、もっと深いところで、もしくは地域スケールで俯瞰的にとらえて取り組み続けているという姿がありました。
そして、活動を続けている多くの方の「時間や労力や持っているスキル」といった自身のリソースを投資・提供し続けている姿がそこにありました。
その周辺では、「これは素敵だね!」「是非残してね!」といった声援をかけたり、その価値を評価しその恩恵を享受はすれど、そこに身を入れて協力する方はわずかという現実がみられます。
ここからいえることは、基本的にデザインされたものはノーメンテではないということ、それから、そこから何かしらを無償で享受している人がいてアンバランスであるということです。
これは、景観・まちなみは人の手によって作られ、維持され、そして続くかいずれなくなる(意図的にもしくは放置など)という、考えてみれば当たり前のことですが、このサイクルの中でLCC(ライフサイクルコスト)が適切でないことからメンテナンス(維持保全)が崩れている場面が多いことを示唆しています。
もうひとつ、景観・まちなみには不動産という要素が深く絡みついているということが、色々な場面で表に出てきます。
そこには、不動産のさまざまな権利や価値(税金徴収できる、収益を上げる、売却益を得る)を抜きには考えられないという事実があります。行政所有の場合であってもそこは基本的な部分で同じことがいえます。
そして、良いといわれているものがなくなっていくのを憂う声が近年大きくなってきていますが、とりわけこの数年は加速し出しているようにも感じます。多くは、所有者や管理者が維持しきれない(年齢体力的、資金不足、精神的などの理由)ためであることが多いかと思います。中には耐震性不足や経年劣化により、手の打ちようがないなどのケースも見受けられます。
稀に行政が引き取るというケースがみられますが、さまざまなクリアー条件とタイミングを逃さないといった、偶然も含めた高いハードルを乗り越えた結果かと思います。
ではなにをする?
ここまで書いてきたようなファクターは、景観・まちづくりはデザインのみの一側面だけではないということを突きつけてきました。
そして、景観整備機構という活動においても、景観法の中で、
というかんじの内容がありますが、調査や支援だけでなく管理を含めた仕組みがあることにより、地域の景観が持続的に守り育てられるものといえるでしょう。
つまり景観整備機構の活動では、情報提供や調査研究のほか管理も含んだ横断した知識やスキルを持つ人材や仕組み(組織・団体)が必要ということです。
そこで、これまでやってきた
- 良い景観やまちなみはどんなものか
- その良さを感じる理由や要素を見つけ出す手法やスキーム
- 判断基準などのノウハウ作成やその目利きができる人材育成
といったコンテンツは継続しつつ、
- 維持保全・運用(経営)などのマネジメント分野
- 不動産価値や税務面などを含めた不動産分野
などについても、これからは情報展開していきたいと思います。
実際のところ、維持し続けることができている事例の多くは、ビジネスモデルを作って運用されています。住宅などの個人資産の場合、賃貸サブリースなどをやらないと、維持するための経費確保がままならず、大変苦労していることが伺えます。
逆にいえば、こういった収益も考慮したマネジメント(いわゆるライフサイクルコスト)スキルがあれば、関わるみんなが活動経費をきちんと確保しながら事業継続が図れるので、その対象である景観・まちなみは維持されていくことになります。
建築士の皆さんからすれば、建築設計だけでなく、建築士の職能の一つであるマネジメント業務の専門知識と技術を大いに活かすことができるわけです。
というか、そもそもこのマネジメントのスキルは、現在話題となっていて業務割合も増えてきつつある「中古建物のリノベーション事業」においても必須のスキルであり、身につけなければお仕事減るよ!ともいえます。これだけでも勉強会参加の価値ありですね!(笑
今回の勉強会のコンテンツをちょっと紹介
今回は大きく次のようなコンテンツで構成されます。
• 景観整備機構について
• 相模原市の景観に寄与する建物紹介
• 熊澤酒造の取り組み
• 銀座ライオンの取り組み
• トークセッション
「景観・まちなみ」のコンテンツでは、どこに価値があるのか、どんな要素(つまりそれを維持保全すれば良い)があるのか、といった目利き力(観察という専門スキル)について基本を確認できます。リノベする時を例にすれば、「ここは良い部分なので残して活かしていきましょう」といえるかどうかですね。
「景観整備機構」のコンテンツでは、どんな目的の仕組みか、何ができるのか、自治体とどんな連携ができるのかの基本事項を解説します。
ここの内容が、法定団体である建築士事務所協会の機構指定を受けていろいろな活動を実施していく専門的中間領域となります。建築設計事務所単独では出来ないけど、組織であるからこそできることになります。とりわけ会員の皆様には機会獲得のチャンスといえます!
「相模原市の景観に寄与する建物紹介」のコンテンツでは、サーヴェイの手法やコツなども交えて現在調査を進めている中でピックアップしている建物などの景観資源をいくつか紹介します。
「熊澤酒造の取り組み」のコンテンツでは、ビジネススキームをその時の状況に合わせていきながら、古い建物を活かしていく事例の紹介になります。建物のことだけでなく、酒蔵であるからこその地域の田畑を守る俯瞰的な視点まで抱きながら、さまざまな状況に対応しながら、良いと思う居場所をつくり守り続ける熱い想いと実行していった姿を生々しくインタビューで伺いました。
今回ははじめてのオンライン開催ということで、インタビュー取材および現地撮影した素材を編集したメイキング映像にてご紹介します。You Tubeなど動画映像による情報配信がこれから当たり前のようになっていくかと思いますが、手軽に作成する手法のご紹介になります。
「銀座ライオンの取り組み」のコンテンツでは、2回にわたる焼け野原をくぐり抜け、銀座という文化と寄り添いながら生き抜いてきた姿をライブ放映で語っていただきます。銀座の通りの景観の現在と、ある意味でオーセンティックなままのビアホールの外観(1階ビアホール空間も公共に開かれた景観である)をどう考えるのか。企業としての存続と、その根底にある文化との葛藤をリアルに語っていただきます。
「トークセッション」では、2つの事例より、ビジネスポリシーと景観的文化的価値のある建物や一団の空間について実務的に関わり、奮闘しているパネラーの皆様に、思いや悩みそして実際の現場を語っていただきます。
まちづくりにおいては、コミュニケーションスキルやファシリテートスキルなどの技術が求められますが、基本的な手法をおさえることで、今回のような手軽なトークセッションをおこなうことができます。(学術的専門性の高い内容になってくると、十分な知識を持ったファシリテーターが求められます。)
さいごに
本勉強会で学べることを簡単に書き出すと次のような内容になります。
- 景観・まちなみに関する基本知識・景観要素
- 景観整備機構の位置付け・業務内容
- 相模原市内の景観要素を持つ建物事例・景観調査手法の一例
- 景観的に重要な建物を活用するための基礎事項
- 既存建物の価値・保全の手法、維持活用のスキームの一例
- 企業における景観(または伝建的要素)に寄与する建物維持のモチベーションやインセンティブの考え方
ー 周辺地域への寄与・その構想や実現性の検討方法
ー ファシリテートスキルの基本
項目の表現があまり上手ではありませんが、ざっとこんな感じかと思います。また、今回の勉強会の内容は継続学習できるように、当サイトへの記事配信や動画視聴によるeラーニングなども取り入れていこうかとも構想しています。
まずは、ぜひご参加いただきどんな内容なのか体感していただきたいと思います。
当委員会では、みなさまの声を聞きながら実務レベルで活用できるコンテンツを配信していきたいと考えています。今回は、ZOOMウェビナーを利用します。そこで勉強会終了時にアンケート機能を使ってみなさまからのご意見やリクエストをいただけるようにしたいと考えています。
多くの方のご参加をお待ちしております。
「景観的に重要な建物を活用する事例を学ぶ」
~土地の記憶を活かす・継ぐ~『銀座ライオン・茅ヶ崎熊澤酒造の取り組み』~
-主な内容-
【第一部】 ・景観整備機構の業務について・事例から学ぶポイント・相模原市の景観に寄与する建物紹介
【第二部】 ・茅ヶ崎市『熊澤酒造』の紹介
【第三部】 ・東京都中央区銀座『ライオン』の紹介
【主 催】一般社団法人 神奈川県建築士事務所協会 景観・まちづくり特別委員会 【開催日時】令和3年3月26日(金) 受付13:30 勉強会14:00~16:40
【会 場】Web講習会(『ZOOM』使用)
※講習会は、Web会議ツール『ZOOM』ウェビナーを利用し実施致します。
【定 員】80名 (先着申込み順。定員になり次第締め切ります)
【対 象】会員(所員を含む)および賛助会員 一般
【参加費用】会 員(所員を含む)および賛助会員:1,000円
会 員 外:1,500円
お申し込み・詳細は下記リンク先をご覧ください。
[…] vol2では、前々回記事「次の勉強会で伝えたいこと」で記載していた下記の内容と、前回記事「景観・まちなみとは(事前資料WEB記事)vol1」で取り上げた内容の続きに触れてみたいと思います。 […]